新潟地方裁判所 平成7年(ワ)269号 判決 1998年2月26日
呼称
原告
氏名又は名称
樋山哲郎
住所又は居所
新潟県三条市大字長嶺四〇七番地七
代理人弁護士
吉田耕二
輔佐人弁理士
牛木護
呼称
被告
氏名又は名称
浅野金属工業株式会社
住所又は居所
新潟県三条市大字月岡二八六六番地
代理人弁護士
坂井煕一
代理人弁護士
斉木悦男
輔佐人弁理士
近藤彰
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 原告の請求
一 被告は、別紙イ号物件目録記載の回転リングを製造し、販売してはならない。
二 被告は、本店、営業所及び工場に存する前項の完成品及びその製造金型をそれぞれ廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、一〇〇〇万円及びこれに対する平成七年五月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
五 仮執行宣言
第二 事案の概要
本件は、原告が被告に対し、被告製品(イ号物件)の製造・販売行為が原告の有する二件の実用新案権を侵害するとして、▲1▼被告製品の製造・販売の差止め、▲2▼被告製品の製造金型の廃棄、▲3▼平成三年一月一日から平成七年一二月三一日までの間に原告が受けた損害一〇〇〇万円の賠償及びこれに対する訴状送達日(平成七年五月二三日)からの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。
第三 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実
一 原告の実用新案権
原告は次の二つの実用新案権(以下「本件実用新案権1」、「本件実用新案権2」といい、その考案をそれぞれ「本件考案1」、「本件考案2」という)を登録日から有している。
1 本件実用新案権1
考案の名称 連結具
出願日 昭和五九年一二月一九日
出願番号 昭五九ー一九二七二六号
公開日 昭和六一年七月七日
公開番号 昭六一ー一〇六六四九号
公告日 昭和六三年四月八日
公告番号 実公昭六三ー一二二五一号
登録日 昭和六三年一二月八日
登録番号 第一七五一一一五号
2 本件実用新案権2
考案の名称 連結具
出願日 昭和六〇年七月五日
出願番号 昭六〇ー一〇二九八三号
公開日 昭和六二年二月二八日
公開番号 昭六二ー三四二四五号
公告日 平成元年一二月四日
公告番号 実公平一ー四〇三六四号
登録日 平成二年七月一一日
登録番号 第一八二二一七三号
二 本件実用新案権1の詳細
1 本件考案1の技術的範囲
本件考案1出願時に添付した明細書(以下「本件明細書1」という、別紙公報<甲三>)実用新案登録請求の範囲請求項一記載のとおりである。
2 構成要件
(1) 両端に雄螺子1、2を形成したU状杆aと、
(2) 一端に前記雄螺子1と同大の雄螺子3を他端に係止雄部4を形成したU状杆bと、
(3) 対向しているU状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3との双方に螺着する雌螺子5を有する滑り止付ナット筒cと、
(4) U状杆aの雄螺子2に螺着する雌螺子6とU状杆bの係止雄部4に係止する係止雌部7とを有する軸筒dとより成り、
(5) U状杆aとU状杆bとを〇リング状に対向せしめ、下方の対向部の雄螺子2と係止雄部4とを軸筒dで継合し、この軸筒dとU状杆aとを廻り止状態に固定し、下方のU状杆bを軸筒dに対して回動自在に設け(以下、この対向部を「連結対向部」という)、
(6) 他方の対向部の雄螺子1と雄螺子3とに滑り止付ナット筒cを螺着したことを特徴とする連結具
3 作用効果(甲三、乙二)
本件考案1は、前記構成によりなる連結具であることによって次のような作用効果がある。
(1) U状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3とに螺着しているナット筒cを回動して一方へ移動させて雄螺子1と雄螺子3の継合固定を解除するとU状杆bは回動可能となる。U状杆bが回動すればU状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3とが離反するからその間隔から例えばロープ11をU状杆bに引っ掛けることが可能となる。再びU状杆bを回動せしめて元に戻し、雄螺子1と雄螺子3とを対向状態にし、滑り止付ナット筒cを元の位置まで螺着すれば再び雄螺子1と雄螺子3は継合固定され、ロープ11は〇リング状のU状杆a、b内から抜けなくなる抜止状態に連結される。
(2) ナット筒cを回動して継合解除し、U状杆bを軸筒dに対し回動してU状杆bの雄螺子3をU状杆aの雄螺子1から離すことにより、大きな間隙を形成できるから、その離れた間隔から太いロープ11を挿入することが可能となる。
(3) 雄螺子1と雄螺子3の対向部はほぼ当接に近くなるから、滑り止付ナット筒cも短くてよく、しかも移動工程も短くてよいから、取り扱い易い連結具となる。
(4) 雄螺子1と雄螺子3とに螺着する滑り止付ナット筒cには滑り止が設けられているから、滑り止付ナット筒cを回動する際手が滑らず回動し易い。
(5) 軸筒dとU状杆aの雄螺子2とを廻り止状態に固定し、U状杆bの係止雄部4を軸筒dの係止雌部7に係止してU状杆bを軸筒dに対して回動自在に設けたから、軸筒dがU状杆aに固定されてU状杆bの軸受部となり、U状杆bの回動は円滑に行われる。
三 本件実用新案権2の詳細
1 本件考案2の技術的範囲
本件考案2出願時に添付した明細書(以下「本件明細書2」という、別紙公報<甲四>)実用新案登録請求の範囲請求項一記載のとおりである。
2 構成要件
(1) 両端に雄螺子1、2を形成したU状杆aと、(本件考案1の構成要件(1)に同じ)
(2) 一端に前記雄螺子1と同大の雄螺子3を他端に係止雄部4を形成したU状杆bと、(同(2)に同じ)
(3) 対向しているU状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3との双方に螺着する雌螺子5を有する滑り止付ナット筒cと、(同(3)に同じ)
(4) U状杆aの雄螺子2に螺着する雌螺子6とU状杆bの係止雄部4に係止する係止雌部7とを有する軸筒dとより成り、(同(4)に同じ)
(5) U状杆aとU状杆bとを〇リング状に対向せしめ、一方の対向部の雄螺子2と係止雄部4とを軸筒dで継合し、この軸筒dとU状杆aとを廻り止状態に固定し、一方のU状杆bを軸筒dに対して回動自在に設け、(同(5)に同じ)
(6) 雄螺子2の端面と係止雄部4の端面との回動隙間9にU状杆bの回動に抵抗を与える抵抗付加体8を介在せしめ、
(7) 他方の対向部の雄螺子1と雄螺子3とにナット筒cを螺着したことを特徴とする連結具(同(6)に同じ)
3 作用効果(甲四)
本件考案2は、前記構成によりなる連結具であることによって次のような作用効果がある。
(1) U状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3とに螺着している滑り止付ナット筒cを回動して一方へ移動させて雄螺子1と雄螺子3の継合固定を解除するとU状杆bは回動可能となる。U状杆bが回動すればU状杆aの雄螺子1とU状杆bの雄螺子3とが離反するからその間隙から例えばロープ10をU状杆bに引っ掛けることが可能となる。再びU状杆bを回動せしめて元に戻し、雄螺子1と雄螺子3とを対向状態にし、ナット筒cを元の位置まで螺着すれば再び雄螺子1と雄螺子3は継合固定され、ロープ10はOリング状のU状杆a、b内から抜けなくなる抜止状態に連結される。
(2) ナット筒cを回動して継合解除し、U状杆bを軸筒dに対し回動してU状杆bの雄螺子3をU状杆aの雄螺子1から離すことにより、大きな間隙を形成できるから、その離れた間隙から太いロープ10を挿入することが可能となる。
(3) 雄螺子1と雄螺子3の対向部は殆ど当接状態に近くなるから、ナット筒cも短くてよく、しかも移動工程も短くてよいから、取り扱い易い連結具となる。
(4) U状杆aの雄螺子2とU状杆bの係止雄部4との回動隙間9にスプリングワッシャー、コイルスプリング等の抵抗付加体8を設けたから、U状杆bのがたつきが防止されてU状杆bは常に定位置にあるから、ナット筒cの雄螺子3への螺着が円滑に行われ、それだけ連結時間が短縮する。
(5) U状杆aの雄螺子2とU状杆bの係止雄部4との回動隙間9にスプリングワッシャー、コイルスプリング等の抵抗付加体8を設けたから、U状杆bのがたつきが防止され、破損品、不良品に見えないから、商品価値を損なうことはないし、不安感がなく使用することが出来る。
(6) 構造的には、従来品にスプリングワッシャー、コイルスプリング等の抵抗付加体8を設けるだけであるから難しくなく、量産を妨げることなく、安価に提供出来る。
四 被告の製造販売行為
被告は、平成三年一月一日から平成六年七月三〇日までの間、イ号物件を業として製造し、販売したこと、その後、同日、外部業者から納入を受けたイ号物件を完売するまで、販売を継続したことは争いがない。
第四 争点及びそれに対する判断
一 争点の概略
本件争点は、被告物件(イ号物件)が本件考案の技術的範囲に属するか否か。即ち、イ号物件は、本件実用新案権1、2の構成要件(2)(4)(5)を充足するか、具体的には、イ号物件は、本件実用新案権1、2の連結対向部の構成である「係止雄部を形成したU状杆」及び「係止雄部に係止する係止雌部を有する軸筒」の構成を有しているかということである。
二 イ号物件の構成
1 原告の主張
(「」は被告が争っている部分である。)
(1) 両端に雄螺子1、2を形成したU状杆Aと、
(2) 一端に前記雄螺子1と同大の雄螺子3を他端に雄螺子2により「係止雄部4を形成したU状杆B」と、
(3) 対向しているU状杆Aの雄螺子1とU状杆Bの雄螺子3との双方に螺着する雌螺子5を有する滑り止付ナット筒Cと、
(4) U状杆Aの雄螺子2に螺着する雌螺子6とU状杆Bの「係止雄部4に係止する係止雌部7とを有する軸筒D」とより成り、
(5) U状杆AとU状杆BとをOリング状に対向せしめ、一方の対向部の雄螺子2と「係止雄部4」とを軸筒Dで「継合」し、この軸筒DとU状杆Aとを廻り止状態に固定し、一方のU状杆Bを軸筒Dに対して回動自在に設け、
(6) 雄螺子2の端面と係止雄部4の端面との回動間隙9にU状杆Bの回動に抵抗を与える対向付加体8を介在せしめ、
(7) 他方の対向部の雄螺子1と雄螺子3とに滑り止付ナット筒Cを螺着したことを特徴とする連結具
2 被告の主張
(1) 二1(一)(1)のとおり
(2) 「逆回りの雄螺子4を形成したU状杆B」としている点以外は、二1(一)(2)のとおり
(3) 二1(一)(3)のとおり
(4) 「逆回り雄螺子4に螺合する雌螺子6aと、雄螺子4の離脱を防止する下端の径小部7とを有する軸筒D」としている点以外は、二1(一)(4)のとおり
(5) 「係止雄部4」を「雄螺子4」としている点及び「継合」を「結合」としている点(この点は、単なる表現の差にすぎないものと判断される)以外は、二1(一)(5)のとおり
(6) 「係止雄部4」を「雄螺子4」としている点以外は、二1(一)(6)のとおり
(7) 二1(一)(7)のとおり
三 判断
1 争点
イ号物件は、本件実用新案権1、2の構成要件(2)(4)(5)を充足するか。即ち、本件実用新案権1、2の連結対向部の構造として、「係止雄部4と係止雌部7との係止構造」を備えているか。
本件実用新案1、2は、連結対向部は、ともに軸筒で連結しているが、軸筒とU状杆との連結構造は、一方が「螺合して廻り止め状態」とし、他方が「係止雄雌部で回動自在」としているのに対し、イ号物件は、一方が「螺子螺合して廻り止め状態」とし、他方が「螺子螺合で回動自在」としていることは当事者間に争いはない。この点、原告は、「係止」「係合」は「螺子」「螺合」を含む上位概念であるから、イ号物件も「係止雄部4と係止雌部7との係止構造」備えており、本件考案1の技術的範囲に属すると主張し、被告は、本件実用新案登録請求の範囲において、「係止」「係合」「螺子」「螺合」とは、明確に区別されて使用されているのであるから、これは同一の技術概念として使用されていないとして、イ号物件は「係止雄部4と係止雌部7との係止構造」を備えていないから、本件考案1の技術的範囲に属さないと主張するので、検討する。
2 本件実用新案権1について
(一) 「係止雄部4と係止雌部7との係止構造」の解釈
(1) 考案の詳細な説明、図面及び公知技術(審査の経緯)の参酌
「係止雄部4」及び「係止雌部7」は考案の詳細な説明において格別の定義がなされていないため、「係止雄部4を有するU状杆b」及び「係止雌部7を有する軸筒d」については、考案の詳細な説明、図面及び本件出願前の公知技術を参酌して解釈することとする(なお、本件出願前の公知技術を参酌すべきことは当事者間に争いはない)。
この点、原告は、実施例不拘束の原則を強調し、考案の詳細な説明及び図面を参酌することは右原則に反する旨主張するが、実用新案登録請求の範囲の記載は、考案の詳細な説明の記載によって裏付けられなければならないのであるから、実用新案登録請求の範囲に記載された技術的範囲を解釈するに際しては、考案の詳細な説明及び図面を参酌することは当然のことである。
(2) 「係止雄部4」と「係止雌部7」
考案の詳細な説明及び図面によれば、係止雄部4について、 U状杆bは一端に前記雄螺子1と同大の雄螺子3を、他端に係止雄部4を形成する。」(公報二欄一一行、一二行)と記載され、U状杆bの他端にはU状杆bより径の大きな部分が形成されており、この径大部が係止雄部4とされていること(図面)が認められる。
また、考案の詳細な説明及び図面によれば、係止雌部7について、「軸筒dは、U状杆aの雄螺子2に螺着する雌螺子6とU状杆bの係止雄部4に係止する係止雌部7とを形成する。」(公報二欄二一行ないし二三行)と記載され、係止雄部4がU状杆bの端部の径大部であるのに対し、係止雌部7は、軸筒dのU状杆b側の端部の径小部であり、U状杆bの他端に形成された係止雄部4である径大部を回動自在に係止するものであること(図面)が認められる。
(3) 「螺着」と「係止」及び「螺合」と「係合」
考案の詳細な説明によれば、「螺着」と「係止」、「螺合」と「係合」は明確に区別して使用されていることは明らかである。
(4) 係止雄部4と係止雌部7との係止構造
考案の詳細な説明によれば、「下方のU状杆bを軸筒dに対して回動自在に設ける。図面は、U状杆bの先端に形成した係止雄部4と軸筒dに形成した係止雌部7とを抜止状態に係合することにより回動自在に設けた場合を示している。」(公報三欄五行ないし一〇行)、「軸筒dとU状杆aの雄螺子2とを廻り止状態に固定し、U状杆bの係止雄部4を軸筒dの係止雌部7に係止してU状杆bを軸筒dに対して回動自在に設けたから軸筒dがU状杆aに固定されてU状杆bの軸受部となり、U状杆bの回動は円滑に行われることになる。」(公報四欄二四行ないし二九行)と記載されていることが認められる。
さらに、乙一号証記載の実用新案権(公告番号実公昭五二ー三六一三二号)は、本件出願前の公知技術であるが、別紙のとおり、本件実用新案権1の公告公報に参考文献として引用されているから(以下、乙一号証に記載の実用新案権を「引用実用新案権」という)、審査官は、これを検討した上で、新規性、進歩性ありと認め、本件実用新案権1の公告決定をしたものと解されるところ、本件実用新案権1と引用実用新案権とを対比すると、後者は、「U字形1、2の両端にネジ3、4、5、6を切り、ネジ3、5を各々反対ネジとなしナット7で継ぎ、ネジ6をネジ4の2倍以上の長さとなしナット8で継ぎ合わせO字形としたロープの連結金具」に関するものであり、その基本的構造は、イ号物件と同一構造であるが、次の構成で相違している。即ち、▲1▼本件実用新案権1の連結対向部は、軸筒dとU状杆aとが廻り止状態に固定してあるのに対し、引用実用新案権は、軸筒とU状杆とが回動自在である点、▲2▼本件実用新案権1の連結対向部が、軸筒dの係止雌部7とをU状杆bの係止雄部4とを係止させて回動自在としているのに対し、引用実用新案権は、ナット7とU字形2とが、螺着されて回動自在となっている点が相違している。前記引用実用新案権が公知技術であるにもかかわらず、本件実用新案権1が登録されたということは、本件実用新案権1の特徴は、前記相違点▲1▼▲2▼における本件の構成、即ち、「軸筒dとU状杆aとが廻り止状態に固定してある」点、及び「軸筒dの係止雌部7とをU状杆bの係止雄部4とを、螺着ではなく、係止させて回動自在にしている」点にあるものと認めることができる。
(二) 以上のとおり、本件考案の詳細な説明及び図面、公知技術(審査経緯)を参酌すると、「係止」「係合」「螺子」「螺合」とは、明確に区別されて使用されているのであるから、これは同一の技術概念として使用されていないところ、本件実用新案権1における「係止雄部4と係止雌部7との係止構造」は、一方を「螺合して廻り止状態」とし、他方を「係止雄雌部で回動自在」としているのに対し、イ号物件は、一方を「螺子螺合して廻り止状態」とし、他方を「螺子螺合で回動自在」としているのであり、本件実用新案権1における構成要件(2)の「係止雄部4を形成したU状杆b」とイ号物件の構成(2)の「逆回りの雄螺子4を形成したU状杆b」、構成要件(4)の「係止雄部4に係止する係止雌部7とを有する軸筒d」とイ号物件の構成(4)の「逆回り雄螺子4に螺合する雌螺子6aと、雄螺子4の離脱を防止する下端の径小部7とを有する軸筒D」、構成要件(5)の「係止雄部4」とイ号物件の構成(5)の「雄螺子4」は実質的に異なる構造のものというべきである。そして、イ号物件は、右の本件実用新案権1と異なった構成により、「U状杆Bを回動することにより、O状リングの上下の長さ及び開閉対向部の開口間隔を調整することが出来る。」、「U状杆Bの雄螺子4は、軸筒Dと螺合しているので、がたつきが生じることはない。」との作用効果を有し、右作用効果は本件実用新案権1では生じない作用効果であると考えられる。
(四) 結論
よって、イ号物件は、本件実用新案権1の構成要件(2)(4)(5)を充足せず、本件考案1の技術的範囲に属しない。
3 本件実用新案権2について
前記認定のとおり、本件実用新案権1、2の構成要件(2)(4)(5)は実質的に同一のものであるから、イ号物件が、本件実用新案権1の構成要件(2)(4)(5)を充足しない以上、本件実用新案権2の構成要件(2)(4)(5)をも充足しない。
よって、イ号物件は本件考案2の技術的範囲にも属しない。
第五 結論
以上のとおりであるから、原告らの請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松田清 裁判官 野島香苗 裁判官 野島久美子)